
2009 年 7 月 13 日
久しぶりに、東京で一人暮らしをして、プロダクトデザイナーを目指している次男に電話をかけ、近況を聞くと、元気がない言葉が返ってきた。
どうも、色々と思うように行かなくて、悩んでいるようだ。
少し考えてから、彼を旅に誘った。
「父さんに3日間付き合ってくれ、一緒に旅をしよう。」
すると、彼は、思いもかけず、あっさりと、「うん、分かった」と承諾した。
考えてみれば、長男の祥平とは、海外の2度の旅を初めとして、何度か、二人旅をしてきたが、次男の耕平とは、今回が初めての二人旅ということになる。
約束した日、昼前まで、仕事をこなしてから、500キロ先の、耕平と待ち合わせしている信州の山奥の宿を目指し、愛車を走らせる。
今日も我が愛車は、機嫌が良く、リアの空冷エンジンの音もいつものように官能的で、次第にスピードを上げていく。
中央自動車道も快調に飛ばし、5時過ぎに、予約を入れておいた、鹿教湯温泉の、四方を山と川、田と畑で囲まれた本日の宿、三水館に到着。
ここ、三水館は、二代目の主が6年前、新しい挑戦として、古民家を移築リニューアルして創られた宿だ。
その時の美術監督とも言うべき人が、木工作家の井崎正治さんだ。
宿のコンセプトからデザインまで考えられた方で、昨年、稲美町のギャラリー天心さんで行われた、井崎さんの個展で実際にお会いし、氏が創られた椅子のデザインと座り心地に魅了され、その場で2脚購入した。
その後、色々な話をさせていただいた中で、お聞きした、三水館さんの話が心に留まり、今回、耕平との一泊目の宿に決めた。
入り口から、吹き抜けになった、ロビーに入った瞬間、流れている凛とした空気に、この宿の主の志を感じる。
それから、ロビーの井崎氏作の椅子、木彫作品、絵画など、井崎さんの作品を目にし、氏の美意識に共鳴する。
耕平は、東京から、列車とバスを乗り継ぎ一足先に、宿に到着していた。
しばらくぶりに会う彼は、少し痩せたように思えた。
苦労しているのか・・・。
夕食前に、一人、温泉に浸かりに行く。
さらっとした湯が心地よく日頃の疲れをほぐしてくれる。
夕食は、地元の野菜と、魚をメインにした、決して着飾った料理ではないが、一品一品、素材の持つ力強く、滋味深い味わいと、身体に染み入る美味しさで、嬉しさがこみ上げてくる。
耕平と、ビールを酌み交わし、普段の東京での生活を聞きながら、5年前、プロダクトデザイナーになるのを、夢に見、家を飛び出していった彼の、この5年の月日を思う。
辛いことも、哀しいこともあっただろう。
面とむかって、会っているのに、気のきいた話もできないまま、夕食が終わった。
夕食後、宿の人が、前を流れる川をもう少し下流に行くと、蛍が見えますよ、と教えてくれたので、川沿いに、下流の方に歩いていくと、青く光る無数の蛍が私達の目の前に現れた。
幻想的な蛍の飛び惑う光景を、耕平と一緒に眺めながら一日目の夜は静かに更けていった。























