
2007 年 3 月 8 日
昨年のアメリカオーガニック視察旅に続いて、今年はパリ・ミラノへビオ(フランス語でオーガニック)マーケット視察旅に出かけることになった。
昨年秋に、当店のお客さんでもある、イラストレーターの川上まりこさんの個展に出かけた時に、数あるイラストの中でも、パリのビオマルシェのイラストと文に惹きつけられてしまった。
昨年、アメリカのグリーンマーケットを見て廻ったのだが、イラスト展に描かれていたパリのビオマルシェの野菜のイラストを見て強烈にパリのマルシェをこの目で見てみたいと思った。
今年になり、昨年アメリカを一緒に廻った長男の祥平が、イタリアのトスカーナ地方の農家でしばらく働かせてもらった後、ヨーロッパ各地を旅することを考えていることを知り、今回も二人で行くことに決める。
3月8日、関空を出発、約13時間かかって、パリ上空に近づいてきて下界を見ると、延々、農業地帯が広がっており、フランスが食料自給率200%を達成しているのが実感できる。
パリ・シャルルドゴール空港に夕方に到着、ここから鉄道と地下鉄を乗り継いで、パリ中心部のサンミッシェル駅を目指す。
今回パリ滞在中に選んだホテルは、セーヌ川沿いに建ち、パリのシンボル、ノートルダム寺院を間近に望む南欧風プチホテル、レ・リブ・ドゥ・ノートル・ダムで、駅から徒歩3分のところにあった。
チェクインを済ませ(ホテルでは英語が通じる)5階の部屋に案内される、部屋の窓からは、目の前にセーヌ川、ノートルダム大聖堂のある、パリ発祥の地シテ島の風景が広がっており、暮れなずむセーヌ川の風景が美しい。
近くを散策してから、セーヌ沿いにあるカフェへ、あまりお腹もへってないので、ビールとサンドイッチを頼む、ビールで乾杯してから明日からのパリのマルシェ巡りを話し合う。
しばらくして、周りを見渡すと、日本人の姿はなく、老若男女のフランス人が楽しそうに会話を楽しんでいる、フランス人にとってカフェはなくてはならない、人とコミニケーションをする場所なんだろう。
中に、一組気になるカップルが、どちらも70歳は超えているように見えるが、おしゃれをして二人でカフェに来て楽しそうに会話をしている、どんな事を話しているのか?
映画の話か、料理の事か、これまでの人生なのか、これからの事なのか気になってしまった。


2007 年 3 月 9 日
朝、目が覚めて窓の外を見ると、ノートルダム寺院の方から朝日が昇ってきている。
まだ、人も車も少ない静かな朝のパリ、セーヌ川の佇いは、ことのほか美しい。
しばらく、窓の外をボーと眺めていると、祥平が起きてきて、散歩に出て行った。
私は、その間に熱いシャワーを浴び、眠気を覚ます。
ホテルで簡単な朝食を済ませ、地下鉄に乗り、最初にサンジェルマン・デ・プレに在る世界で一番古い歴史をもつデパート、ル・ボン・マルシェに向かう。
1852年創業のボン・マルシェの食品館に一歩足を踏み入れると、そこには今まで見たことがない、重厚でおしゃれな空間が広がっている。
野菜、果物の美しくセンスの良いディスプレイは参考になる。
肉・魚の売り場は凄まじいまでの迫力のあるドラマチックな演出がなされており度肝をぬく。
惣菜・デリ、チーズ、スィーツの売り場は、これぞパリといった美しく、美味しそうな盛り付けが、猛烈に食欲をさそう。
その他フランスの高級食材が集められている店内は、どこを見ても美しく見せる仕掛けが感じられ、商品一つ、一つのパッケージデザインも秀免で、洗練されている。
働いている人たちもおしゃれなユニフォームで、皆、ここで働いている誇りをもっているのだろう、温かななかにも、凛とした接客態度は好感が持てる。
買い物をしている人たちは、やはりセレブ風のおしゃれなマダムが多く、その服装を見ていても、今の最先端のパリのモードスタイルを感じる。
もちろん、写真撮影は禁じられているので、写せなかったが、店内の様子はまぶたに焼き付けた。


ボンマルシェを後にしてから、最初のパリ行きの目的である、マルシェ・ラスパイユへ向かう マルシェ・ラスパイユをひと目見て、全身に電流が流れたかのようなショックを受ける。
なんて美しい食材なんだ、野菜が、果物が生き生きとしており、香りも高い。
肉、魚の独特のディスプレイには、エレガントささえ感じる。
チーズやパンの香りもあたりに立ち込め、食欲をそそる。
道の両側にずらりと並ぶ食材の豊富なこと、野菜はフランスの厳しいビオの基準を受かったもの、魚は、フランス近海で獲れた天然の魚で、下に敷く氷も添加物の入ってないもの、牛の餌までビオの基準をパスしたもの、パンはもちろん香り高い天然酵母で焼かれたもの、チーズは無農薬飼料で育てられた牛、羊の乳から作られたもの、塩はゲランド地方の天然塩、化粧品までビオである。
昨年、アメリカのオーガニックグリーンマーケットを見てきたが、桁が違う。
パリ市内だけでも、70箇所以上あると言われている、パリ市民の胃袋を支える台所、マルシェの中でも、ラスパイユが人気があるのは当然だろう。
まだ、3月の初旬で気温も低い中、これだけの種類の野菜、果物が並ぶのは、フランスも南に行けば地中海に面した、温暖な南仏プロバンスが控えているからだろう。
野菜、果物の色とりどりの組み合わせによる、ディスプレイは見事の一言。
一見、無造作に見える盛り付けも、全体としてみれば、上手に調和しており、一朝一夕で、まねできる芸当ではない。
売っている人の服装もそれぞれ個性的で、その人に合ったおしゃれをしている。
マルシェ・ラスパイユの食材も人も素敵だ。


マルシェ・ラスパイユを後にしてから、サンジェルマン・デ・プレ教会を目指し、徒歩で向かう。
教会の正面にある、カフェ、レ・ドゥ・マゴで休憩。
ここ、レ・ドゥ・マゴは1914年創業、サルトルとボーヴォワールが原稿を書いていたことでも有名な文学カフェで、香りが高く、マイルドな味わいのコーヒーが美味しい。
レ・ドゥ・マゴを出てから、高級スーパーのモノブリ、大衆的スーパー、シャンピオンに立ち寄った後、ビストロ、ラ・カフェチエールで昼食、牛肉たっぷりの野菜のポトフと白ワインを堪能。
その後、パン屋、惣菜屋、ケーキ屋、チョコレート専門店、チーズ専門店などを巡る、どこも
パリならではの、おしゃれで、洗練された店ばかりでディスプレイの上手さは参考になる。
夕方、ノートルダム大聖堂へ1163年から約200年もの歳月をかけて1345年に完成した、ゴシック建築の大聖堂は、荘厳で、神々しいまでの建造物だ。
内部に入ると、高いアーチ天井と、キリストを抱く聖母マリア像が佇む、バラ窓のステンドグラスから射し込む光が美しい。
いちど外に出て、階段を上って塔の頂上を目指す、387段上って、やっとたどり着いた頂上からの、セーヌ川とパリの眺めは素晴らしい。
夕食は、セーヌ川沿いのワインレストラン、レクルーズへ、ここは、ボルドーのワインの品揃えには定評があり、それもグラスでオーダー出来るのが有り難い。
生ハムのサラダを頼み、メドックの赤ワインをオーダー、コルクの栓を開けてグラスに注がれた瞬間、柔らかくエレガントな香りが立ち込める。日本では、なかなか体験できないことで、やはり乾燥したパリの空気が成せる業なのでしょう。
香り、果実味、酸味がバランス良く調和した味は、最高で、生ハムとの相性もばっちりだ。
牛肉の煮込みに、グラーブの赤を合わせて大満足のほろ酔い気分で夜は更けていく。


2007 年 3 月 10 日
今日は、早朝からカルチェ・ラタンに在るマルシェ・ムフタールへ。
サン・メタール教会からパンテオンの裏手に通じるムフタール通りで、常設されているマルシェは、火曜日から土曜日までの、9時から19時までと、日曜日の午前中のみ営業している。
細い石畳の坂道の両側に面している店は、マルシェ・ラスパイユのように、テントで営業しているのではなく、建物のなかに店舗を構えて、営業しているので、ラスパイユと違い、レストラン、カフェ、ワインショップ等も有り、昔ながらのパリの情緒有る佇まいが絵になる。
特に肉屋さん、魚屋さん、総菜屋さんの充実ぶりは、マルシェ・ラスパイユを凌ぐものが有る。
人気の有るパン屋さん、肉屋さん、総菜屋さんの前には行列ができており、中を覗くと、良い匂いと、いかにも美味しそうな食べ物が並んでいる。
この近くに住んでいる人は幸福だ、こんなに素晴らしい常設のマルシェはなかなか無い。
マルシェ・ムタールを後にして、同じカルチェ・ラタンにある、パリで一番パンが美味しいと言われている、メゾン・カイザーへ向かう。
アルザス出身の有名パン職人、エリック・カイザーの店は、行列ができていたので、すぐ分かった。さっそく、行列に並び順番を待つ、氏の天然酵母で焼き上げられた、香りの素晴らしいパンは、種類も多く、多いに迷ったが、色々買って店を出る。
ビールも買って、天気の良いセーヌ川の畔でピクニック気分!
パンの美味しさは言うまでもなく、ノートルダム大聖堂を見ながらの昼食は格別だ。


セーヌ川畔の昼食の後、シャンゼリア界隈のテルメ地区を目指す。
まず、ボンスレ通りの常設のマルシェの中で、ひときわ光る、一軒の魚屋さんを発見。
鮮度、魚の種類、ディスプレイの上手さ、魚の惣菜の多様さ、全てがあの、ボン・マルシェをも
凌いでおり、文句無く私の知るパリの魚屋さんのナンバーワンだ。
特に魚のディスプレイは美しく、刺激を受ける。
次いで、近くのお惣菜やさん、メゾン・プーへ。
高級感漂う店内に並べられた、ハム、パテ、テリーヌの美味しそうなこと。絶えず人が訪れる人気店の秘訣を垣間見る。
そして、1850年創業の、パリで最も古いワイン専門店、カーヴ・オジェへ。
オーナーが直接買い付けるワインの種類はパリでも一番多いらしい、足元から、天井付近まで積み上げられたワインは、いくら見ても迷うばかりで、今の旬のビオワインのお勧めを購入。
ワインを抱えて、マドレーヌ広場の高級食料品店、エディアールへ。
赤と黒でデザインされた店内には、フォアグラや、キャビアなどの高級食材が整然と並び、15万本ものワインの売り場の壮観なこと。
同じく、マドレーヌ広場に面した、グルメ憧れのフォッションへ。
世界中から取り寄せた高級食材が揃う店内は、最近、新しいデザイナーにより、新しく生まれ変わったらしい。今のパリを感じる、斬新なデザインは面白いとは思うが、私個人としては、以前のデザインの方が好みである。
白状すると、昨年ワインの取扱いを始めた時、参考にさせてもらったのが、本で見た、以前のフォッションの地階のワイン売り場の写真であった。
新しい未知の世界に挑戦しようとしている、老舗のフォッションの店先でしばし、物思いに、耽ってしまった。


フォッションを後にして、パリのランドマーク凱旋門へ。
ナポレオンの指示で建設された、凱旋門は、皮肉にも彼の死後15年たってから完成。
第一次大戦以降は、祖国フランスの為に命を捧げた全ての人々の共通の記念碑となっている。
284段の階段を上って凱旋門の頂上へ。
屋上からは、エッフェル塔、コンコルド広場に続く、シャンゼリゼ大通りなどパリの町並みの全貌が見渡せ、幾何学的に統制されたパリの都市計画が良く解る。
放射線状に延びる12本の通りで構成されたパロラマ状のパリの町並みは本当に美しい。
凱旋門を出てから、オペラ・ガルニエの裏に在る、1896年創業のパリで最大のデパート、
ギャラリー・ラファイエットに向かう。
本館のアールデコ調の丸天井のステンドグラスは見事で、歴史を感じさせる。
ここでも、お目当ては、グルメの食品館で、夕方5時過ぎと言うことで、大勢の人々で賑わっているが、目に付くのが中年の紳士で、ハム、チーズなどの食べ物を真剣な眼差しで見つめている。
フランス人の食に対する凄まじいまでの執念を感じた。
夕食は、1896年創業のビストロ、シャルティエへ、。
モンマルトルの通りからアーチをくぐって店内へ、レトロなインテリアが往時を物語っている。
ギャルソンがメニューを持ってきたが、フランス語ばかりで、全く解らない、ギャルソンも英語が話せず、さて、どうしたものか思案していると、隣の席の年配の男性が英語で話しかけてくれた。
彼は、ドイツ人でフランス語も話せるらしい、ドイツ人の彼に英語で、メニューの内容を教えてもらい、やっとオーダー、今日もかなり歩いたので、まずは、ハイネケンで乾杯。
次々出てきた、カニのサラダに、ラタトゥイユ、キッシュ、仔豚のパテといった料理は、盛り付けこそ色気がないが、パリのおふくろの味と言う感じで、ワインにもピッタリ。
ワイワイガヤガヤ、フランス語が飛び交う気取らないビストロで普段着のパリを味わう。


2007 年 3 月 11 日
今日も早朝から、パリで最大のマルシェ、パスティーヌに向かう。
マルシェに行く前に、パスティーヌ広場の前のカフェでコーヒーを飲みながら、カフェにいる人、道行く人を眺めていると、パリの人々は、女の人も、男の人も、それぞれに合うおしゃれをしており、歳を重ねた人もかっこよく見える。皆、自分を知り、自分の人生を楽しんでいるようだ。
マルシェ・パスティーヌは、大勢の人々で賑わっており、パリ最大と言うだけあって、今まで見てきたマルシェの数倍の規模だ。店先に並ぶ商品もバラエティに富み、生鮮食品から、衣類、雑貨まで、日常生活に必要なものはほとんど揃っている。
八百屋さんだけでも30軒以上、魚屋さんでも20軒以上あるので、競争も激しいらしく、売り子達の呼び声も大きく、値切るお客との、丁々発止のやり取りは、迫力がある。
ここのマルシェで、買い物をしていると、気の弱い人も鍛えられるだろう。
昼食は、マレ地区に在る、南仏料理のビストロ、シェ・ジャヌーへ。
グリーンの概観が遠目でも目を引く、テラスも有り、かわいらしいプロバンスのオーベルジュを思わせる雰囲気、店内にはレトロのポスターや時計などが飾られ、ノスタルジックを感じる。
黒板のメニューにあるのは、野菜やハーブをたっぷり使った、プロバンス料理だ。
前菜とメインとデザートのプリフィクス、14ユーロのコースを選び、前菜に、プチトマトとシューブルのロースト、メインにエビのフランベ、デザートにフロマージュ・ブランを頼む。
ここも、ギャルソンには、英語が通じず、まわりも、フランス人だけだが、居心地は良いし、なぜか、落ち着く、私もすこしずつフランス人に近づいているのか?
グラスの白ワインを飲みながらバケットを食べていると、前菜のプチトマトとシューブルのローストが出てきた、トマトと山羊のチーズの白のコントラストが美しい。
一口食べて感激した。美味しい!
山羊乳のチーズの酸味が、火を通して旨味を増したプチトマトとあいまって濃厚だが、爽やかな味で、バケットに載せ、白ワインと合わせると、最高の料理。
今迄経験したことのない味だが、永く脳裏に残る味だろう。


シェ・ジャヌーを後にして、近くのマレ地区を散策。
マレ地区には、16?18世紀の面影と風情が残っており、古きよき時代の佇まいが、そこかしこ
に残っている。サロン文化が花開いた優雅な時代の貴族の館が数多く残る通りを、歩いていると、まるで、16世紀の当時にタイムスリップしたかのような錯覚を覚える。
マレ地区から橋を渡って、サン・ルイ島へ、シテ島と並んで、セーヌ川に浮かぶもうひとつの島で、観光客で賑わうシテ島とは打って変わって、ひっそりと落ち着いた雰囲気だ。
17世紀の貴族の館が建ち並ぶこの島、パリでもっともステータスのある高級住宅地とされていて、パリっ子もあこがれの場所らしい。こじんまりとしたメインストリートには素敵なお店が建ち並んでいて、歩いているだけでパリっ子になった気分になる。
ルーヴル、オルセーなど世界の美術ファン憧れの美術館が集まるパリでも、私が一番行きたかったのが、8年に及ぶ長い改装工事を経て、再オープンになったばかりの、オランジュリー美術館だったのです。
入り口を入り、正面の架け橋を渡って入った、大きな楕円形の部屋の壁に、その絵はあった。
モネの連作「睡蓮」である。
美しい!このような色の『睡蓮」をみるのは、初めてである。
自然光の中で見る、「睡蓮」は、太陽の微妙な光の変化で、次々に表情を変え、まるで、実際のモネの庭に迷い込んだような気になる。
ノルマンディ地方のジヴェルニーのモネのアトリエで描かれた「睡蓮」の大作8枚が、モネ自身の意思で1927年にオランジュリー美術館に寄贈された。
80年近く経った昨年、モネの生前の希望であった「自然光を取り入れた明るい部屋」の展示を再現。8年近い歳月を掛けて『睡蓮の間」は、天井から自然光の降り注ぐ空間に生まれ変わった。
ふたつの楕円形の大きな部屋の壁いっぱいに、8枚の「睡蓮」が掲げられている空間は、静かで、瞑想的で、次々に表情を変える「睡蓮」の前を、立ち去りがたい思いに囚われてしまった。
あまり知られていないが、『睡蓮」の原語タイトルは、ナンフェアで、ギリシャ神話に登場する妖精の意味で、特に水の精を表している。
私の前にも、妖精が現れていたのかもしれない。


オランジュリー美術館を出てから、エッフェル塔へ向かう。
地下鉄のエコール・ミリテール駅の階段を上がっていると、ふらっとして、一瞬目の前が真っ暗に、やばい!と思って近くの手すりを持ち、こと無きを得た。
考えてみれば、パリに着いた翌日の早朝から、夜遅くまで、無理な強行日程を組んでかなりの距離を歩き回っている。すこし、休めというサインだったのだろう。
祥平は、エッフェル塔の散策に出かけて行き、私は、公園のベンチで休むことにした。
しかし、ここ、シャン・ドゥ・マルス公園から望む、エッフェル塔の眺めも壮観だ。
しばらく、ベンチに座って、一人、ぼーっと、パリの風を感じていた。
夕食は、庶民派ビストロのシェ・ポール。
昨年のニューヨークの旅では、三ツ星レストランを初めとする、最新の料理を食べ歩いたが、今回の旅では、普段パリの人が食べている料理を食べるのが目的だ。
パスティーユ駅から、朝に行ったマルシェの行われていた広場に行ってみたのだが、ゴミひとつ落ちていないほど、見事に片付けられていて感心する。
石畳の小さな通りにおしゃれなカフェやレストランが並ぶラップ通りから、ちょっとあやしい雰囲気が漂うシャロンヌ通りに入ったところに目指すレストランはあった。
店に入ると、肩肘はらないレトロな内装で好感が持てる。
しかし、メニューはフランス語だけで、ギャルソンも英語は通じない、回りを見渡して、美味しそうな料理を見つけそれを、オーダーする。
まずは、赤ワインで、パリ最後の夜に乾杯。
まず、出てきた料理は、牛の骨髄で、バケットに載せて食べるとこれがなかなかいける、ワインにもぴったり。次に出てきたのが、ポトフーで、これぞまさしく、パリの家庭料理という感じで、野菜も美味しい、そして出てきた牛のテール煮込みに舌鼓をうち、ここまでは、パリの家庭料理を満喫。
最後に出てきたのが、牛のステーキマスタードソースで、焼加減もミディアムレアで、見た目はかなり美味しそう、大きめにナイフで切って口に入れると、味は美味しいのだが、かなり噛み応えがある、私も歯とあごの強さは自信があるのだが、噛んでも、噛んでも喉にいかない。
思い切って飲み込んだところ、喉に詰まった。
うっ! 一瞬、目が白黒する。
日本に恋女房を残して、ここパリで死ぬわけにはいかない。
必死で飲み込む。
ごっくん!
前の席に座っていたフランス人のおねえちゃんが、何の音?という感じで振り向いた。
自分でも驚くような大きな音がして、危機を脱した。
恐るべし!フランスの牛。





































