
2009 年 7 月 17 日
無言館を出てから、東御市にあるヴィラディストファームへ向かう。
ここは、エッセイスト玉村豊男氏が開いた、ガーデンファームアンドワイナリーでカフェもオープンしている。
玉村氏は、41歳の時、過労とストレスから大量の血を吐血し、さらに輸血後、肝炎にかかって2年の闘病生活を送る中、人生の折り返し点で、そろそろ死ぬ場所となる終の棲み処を探し始めるのも悪くないなと思い立つ。
ちょうどその頃、奥さんは、ある園芸家との出会いから、農業の喜びに目覚めていた。
奥さんに触発されて、日当たりのよい広いところで農業をやろうと、2年間、毎週、車を走らせてついに、二人は理想の土地を見つけ出す。
その場所に、理想の家を建て、奥さんと二人だけで農園をはじめるのだが、その時の様子は、氏の「種まく人」「田園の快楽」に詳しく書かれている。
私は、15年前に読んで、そのライフスタイルに憧れた。
氏はその後、農場を広げ、ワイナリーとカフェまでオープンする。
その経緯は「花摘む人」に書かれており、60歳を前にして、億という借金をして、ワイナリーまで創ろうとしたのは、子供のいない氏が、どうしたら、ヴィラディストファームを次の世代に受け渡せるのかを 考えての決断だった。
その心境を、氏は、好きなラテン語のことわざを引用している。
「勤勉なる農夫は、みずからがその果実を見ることのない樹を植える。」
その言葉に、私は感銘を覚える。
東御市の小高い丘の上に、目指すヴィラデストファームはあった。
ハーブガーデンから続く一面の葡萄畑、その下には、上田市街と千曲川、遠くにはアルプスの山々、素晴らしい景色だ!
この景色を私は、長年見てみたかったし、今回、耕平にも見せたかった。
カフェに入ると、景色が見渡せるテラス席に案内される。
平日の1時を回っているのに、女性客で、ほぼ満席の状態だ。
ランチメニューの中から、私は、「やわらか蒸し鶏のアボドソース」を、耕平は、「自家製ソーセージ」を選ぶ、それぞれに、スープと自家製パンがセットになっている。
最初に出てきた、かぼちゃのスープの美味しいこと、自家製のパンも香り高く、フランスで食べたパンを思い出す。
メインの料理は、それぞれ美味しかったが、自家農園で採れた野菜もタップリに盛られており、この野菜の濃厚な味わいは、忘れがたい。
窓の外に広がる素晴らしい眺望と、この料理が揃えば、多くの女性客の人気を呼ぶのも当然だ。
働いているスタッフもイキイキとした表情で、この職場を愛しているのが伝わってくる。
19年前に、玉村氏が、闘病をきっかけに、導かれるように、終の棲み処で隠遁生活をしようと、2人だけで始めた、ヴィラディストファームが、多くの人との出逢いにより、今では、40名を超える若いスタッフが働く、世代を超えて永続しようとしている場所になっていることに感動を憶える。
食後、耕平と眼下に広がる素晴らしい光景を眺めながら、ガーデンを散策した。
そして、夢を見る力と自分を信じる力が、ここを創りだしたのだと感じた。
耕平と私にも、夢を見る力が必要だ。





















